今日はこれで、とか書いておきながら、何やら京極夏彦先生が電子書籍について、「紙のまねしないのが大事」とかすごくいいこと仰ってるので、調子に乗って全部出してみることにした。
さて、ここからは個人的な昔話になるので、業界に詳しい方はすっ飛ばしていただいても構わない。というか古くからのお知り合いの方は恥ずかしいから読まないでください。。。
20年前の夏、大手では個性派と言われていた書店リブロの入社試験で、私は再販制度について熱いことを言ったか書いたかした記憶がある。当時生まれた子供が次の成人式に来ちゃうぐらい昔の話である。
「私たちは再販制度解体にも負けない、強い書店にならなければいけないと思います」。
リブロには当時、子会社にリブロポートという出版社があったにもかかわらず、そう言って、そして私は採用された。まあ、バブルの最後のしっぽの年だったし。自分なりの業界研究ができている子だと思われたのかもしれない。
5年間、書店で働き、コンテンツを売るにはコンテクストを売るつもりで棚作りをしなさい、と何度も叩き込まれた。数年経って、当時隆盛だったコンピュータ関連書の売場を任されて、取次に口座がない版元から直取引で雑誌を入れたり、ソフトウェアなどの再販制度に入っていない「著作物」をソフトの卸から仕入れたりしているうちに、ますます再販制度への疑問が湧くと同時に、返品不可の世界で生き残る術を真剣に考えるようになった。
その後、PC関連書の出版社インプレスに営業職で採用され、転職した。作る側の理屈が知りたかったし、バブル後の書店でいくら熱く仕事をしても、生涯賃金がいくらぐらいで終わるか見えてしまったからだ。で、営業というからには書店営業をやるんだとばかり思っていたら、直販サイトで自社製品を売る、という部署に配属されていた。
この「自社製品」には「電子メールによるメールマガジン」も含まれていた。さらに後には、お客様の便を考えて、書籍や雑誌、メルマガと強い関連性を持つ商品としての他社製品、ソフトウェアも扱うようになった。そんなわけで、ここでも「コンテンツを売るということ」と「コンテクストを売るということ」を突きつけられた。しかもネットをプラットフォームとして。
インプレスを辞め、ウェブなどの企画・制作会社を経て、今度はIT系ニュースを扱うネットメディア企業のCNETへ入社した。ここではもはや、コンテンツとコンテクストは一体となってユーザーに提供されていて、ユーザーとの双方向コミュニケーションを取り入れようという試みも幾度もやった。まだ twitter と Facebook がなかったので、結構苦労したけれど。
2007年に体調を崩したのをきっかけに退職することになったが、これまでの「コンテンツ」と「コンテクスト」を提供する場を作る、という考えをより具体化できたのは、毎日大変な勢いでコンテンツが飛び交い、その中でコンテクストを創造するにはどうしたらいいか、走りながら考えなければならなかったCNETでの環境があったからだと思っている。
ふぅ。昔話はここでおしまい。で、出版業界は結局どうすりゃいいのよ、という話へ移ろう。
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